事例紹介

2025.11.25
  • 相続
  • 相続コラム

連絡の取れない相続人がいる場合

はじめに

弊所にて相続登記のご依頼をお受けする際に、「連絡の取れない相続人がいるのですがどうしたらよいですか」というご相談をいただくことがあります。相続登記ができないと不動産を売却することができない、相続登記が義務化されたがどうしよう、というお悩みや不安をお持ちの方へご参考になればと思い、このような場合に取り得る方法について概要をご説明したいと思います。

まずは住所の調査

相続人の中に、連絡先が分からない人がいる場合は、住所の調査から始めることになります。戸籍を順番に辿っていき、その人の現在の「戸籍の附票」を取得すれば、住民票上の住所が記載されているので、住所を調べることができます。

住所が分かったら

住所が分かった相続人に対しては、まずその住所に手紙を送ってみることから始めます。被相続人が亡くなったので相続手続を進める必要があるということを丁寧に説明し、自身の連絡先を記して連絡を欲しい旨伝えます。連絡が取れて、無事に遺産分割内容がまとまった場合は、遺産分割協議書を作成し相続人全員の実印を押印して相続登記の手続きを進めます。

もし、手紙は届いたが、連絡がない、もしくは連絡があったが遺産分割協議に応じてもらえないといった場合は専門家に間に入ってもらうことで話がまとまることもありますが、それでも話し合いがまとまらない場合は、遺産分割調停・審判という家庭裁判所の手続きを利用することができます。審判では、相手方が話し合いに応じようとしない場合であっても、裁判官の判断によって遺産分割をすることができます。その場合は調停調書(審判の場合は審判書+確定証明書)により相手方の協力がなくとも相続登記をすることが可能となります。

住所は分かったが行方不明の場合

手紙が届かず、また、住民票上の住所を訪ねても住んでいる様子がないということであれば、次の方法が考えられます。

・不在者財産管理人の選任:元の住所を去った人の財産の管理人を裁判所に選任してもらう手続き

・失踪宣告:元の住所を去った人の生死が7年間(災害等で生死不明になった場合は1年間)明らかでない場合に、その人が死亡したものとみなす手続き

不在者財産管理人を選任した場合は、連絡が取れない相続人の代わりに不在者財産管理人を加えて相続手続を進めることになります。不在者財産管理人は、不在者本人の利益を守る義務を負っており、遺産分割に際しては、家庭裁判所の許可を得たうえで協議に参加する必要があります。また、不在者が将来戻ってきたときに備えて、代償金を供託するなどの措置を講じることも求められます。

失踪宣告の場合、その相続人の子の有無や、元の住所を去った時期によって進め方が異なります。元の住所を去った時期から7年経過時点で死亡したものとみなされますので、その時点が被相続人の死亡前であれば、その相続人の子が代襲相続人として相続人に加わることになりますし、被相続人の死亡後であれば、その相続人を相続する人が権利を相続して遺産分割協議に加わることになります。

不在者財産管理人選任申立てについて

費用

収入印紙800円分、連絡用の郵便切手が必要になります。それ以外に予納金(財産管理人の報酬準備金)の納付を求められる場合があります。金額は30万円〜100万円が相場とされており、個々の事件内容により裁判所が決定します。予納金は、選任された不在者財産管理人への報酬原資として供託されるものであり、不在者の財産で支弁されない場合は一部または全部が返還されないこともありますので注意が必要です。

不在の事実を証する資料

申立てるときには、本当に「不在者」であるかを調査して裏付ける資料を提出する必要があります。

(例)

・住民票上の住所に宛てた郵便物が「転居先不明」「あて所に尋ねあたりません」等の理由で返送された場合、返送された郵便物

・不在者が住んでいた住所を訪ねて発見することができなかった場合、現地調査報告書

・不在者の近親者に不在者の所在を尋ねて手がかりを捜した場合、近親者の申述書

・警察に捜索願を出した場合、捜索願受理証明書

不在者財産管理人の権限外行為許可申立て

不在者財産管理人が不在者に代わって遺産分割協議をする場合は「権限外行為許可」という手続が必要となります。申立人は不在者財産管理人です。不在者財産管理人は,民法103条に定められた権限を持っていますが、それは主に財産を保存することですので、遺産分割協議をする行為は不在者財産管理人の権限を超えているため、別に家庭裁判所の許可が必要となります。家庭裁判所の許可がおりましたら、遺産分割協議書を作成し、相続登記の手続きをします。

注)許可申立てをする時点で遺産分割協議書案について不在者管理人以外の全ての相続人が内容について同意している必要があります。

おわりに

連絡が取れない相続人がいる場合の相続登記のおおまかな流れをご説明させていただきましたが、実際には個々のご相続や不在者の状況、財産状況等をお聞きしてお手続きの進め方を検討する必要がありますので、お困りの場合は是非神楽坂法務合同事務所へお問い合わせください。

(文責:村上)

【ご参考(裁判所HP】】

不在者財産管理人選任

不在者財産管理人の権限外行為許可