事例紹介

2025.04.18
  • 不動産登記

改製不適合物件について

はじめに

先日、登記情報をオンライン取得しようとしても取得できない土地がありました。

建物はお客様のご自宅で登記情報があり、底地もお客様の名義とのことで、建物の底地番で必ず登記記録はあるはずと考えていましたが、エラーになってしまうため、管轄法務局に登記事項証明書を郵送請求したところ、コンピュータ化された登記事項証明書ではなく、紙ベースで作成されていた従前の登記簿謄本の写しに法務局の認証がされたものが返送されてきました。

不思議に思い管轄法務局へ問い合わせたところ、登記情報がオンライン取得できなかった理由は、当該物件が「改正不適合物件」であったためでした。改正不適合物件とは、登記記録がコンピュータ化されていない物件とのこと。

一昔前は、紙媒体の帳簿によって登記記録が管理されていましたが、1988年の法改正により順次コンピュータ化されました。この段階で、何らかの理由があり改製ができなかったため、現在も紙の帳簿によって管理されている物件(改製不適合物件)が存在するそうです。

何らかの理由には、

・同一の不動産について数個の登記がある(いわゆる二重登記)

・登記されている持分の合計が1にならない

・登記記録の中に判読できない文字が存在して移記できない

などがあるそうです。

 改製不適合物件の登記情報の取得

登記情報がコンピュータ化されている不動産の謄本を取得したい場合、不動産所在地を管轄する法務局だけではなく、全国の法務局で取得可能です。しかし、改製不適合物件は登記記録が記載されている紙媒体の簿冊が物件の所在地を管轄する法務局で管理されているため、登記簿謄本を取得できるのは、改製不適合物件の所在地を管轄する法務局のみとなります。 

改製不適合物件の登記手続き

不動産の登記申請方法には、「書面申請」と「オンライン申請」の二つの方法があります。書面申請とは、登記申請書を書面で作成し法務局へ提出して行う登記申請方法です。オンライン申請とは、インターネット上から登記申請情報を法務局へ送信して行う登記申請方法になります。

通常であれば、登記申請者が書面申請、オンライン申請のどちらかを選択して不動産登記の申請手続きを行うことが可能ですが、登記手続きの対象不動産が改製不適合物件である場合、オンライン申請を選択して手続きをすることができません。そのため、書面申請の方法で登記手続きをすることになります。 

 改製不適合物件の登記識別情報

オンライン申請可能な法務局へ所有権移転登記を申請した場合、手続き終了後、名義人となった人に対して登記識別情報通知書が発行されます。しかし、登記手続きの対象不動産が改製不適合物件の場合、オンライン申請の方法で登記ができないため、手続き終了後に登記識別情報通知書も発行されません。その代わりとして、登記申請書の写しに登記済の印の押された登記済権利証が発行されます。 そこで、改製不適合物件の登記申請手続きを行う際、登記完了後に登記済権利証となる申請書副本を登記申請書と一緒に法務局へ提出する必要があります。

おわりに

相続や生前贈与等で登記の対象不動産が改製不適合物件である場合、申請手続き方法もコンピュータ化されている一般的な物件と異なる方法となります。もし、登記の手続き対象が改製不適合物件の場合は、ぜひ神楽坂法務合同事務所へご相談ください。

(文責:村上)