- 2025.06.16
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- 不動産登記
相続土地国庫帰属制度(実例紹介)
はじめに
令和5年4月27日に開始しました相続土地国庫帰属制度は、相続または遺贈によって宅地や田畑、森林などの土地の所有権を相続した人が、一定の要件を満たした場合に、土地を手放して国に引き渡す(国庫に帰属させる)ことができるという制度です。本制度について、弊所小田原支店の初回実例をご紹介いたします。
ご相談事例
神奈川県内の土地(登記地目:田 課税地目:畑)1筆(約140㎡)
申請の手順
①現地の写真撮影と必要書類の作成
申請書には土地の形状や隣接地との境界点を明らかにすための現地写真や添付書類など必ず提出しなければいけない資料がいくつかあります。今回は弊所提携の土地家屋調査士が現地へ行きご依頼者様に土地の情報をヒアリングしながら写真撮影しそのデータを使用して添付書面を作成のうえ弊所にて申請書を作成いたしました。
②管轄法務局による事前相談
次に今回の管轄法務局である横浜地方法務局相続土地国庫帰属担当係へ事前予約のうえ準備した申請書類等を予め郵送し、無料相談をしました。ここで申請書の細かい部分を指摘してもらい、調整を行います。現在はテレビ会議システムにより相談が可能ですが、弊所の相談当時はまだ実施されておらず電話相談を選択しましたが、かなり細かい点まで丁寧にご指摘いただけました。
この事前相談は何度でもしてもらえるので、指摘箇所の全ての訂正が終わるまで数回法務局とやりとりをしました。相談件数も担当者もそれほど多くないのか(?)、一度相談した後二度目以降はこちらの事務所や担当者の名前も覚えていただきスムーズに相談に乗っていただけました。
今回の土地については、国庫帰属制度の要件として他人の所有地を経由しないと敷地内に入れない土地はNGとなっていますが、接道している間口はあるものの人1人が通れる程度の幅であったことが心配要素ではありましたが、現地調査の結果その点はOKでした。また、みかんの木が1本ありましたが、地上有体物がないことも要件となりますので、最終的に伐採をお願いすることになりますとのお話でした(こちらは想定の範囲で織り込み済み)。
国庫帰属制度は申請時に、申請費用として土地1筆当たり14,000円の審査手数料を納めなければなりませんが、申請後にその土地が「相続土地国庫帰属制度」の要件を満たしておらず、申請が却下されることとなっても審査手数料は返金されませんので、そのような事態をなるべく避けるためにも法務局への事前相談は極力丁寧にいたしました(ただし、相談により申請が認められることが担保されるものではありません。)。
③管轄法務局に申請
法務局への相談が完了した後、完成した申請書を管轄法務局へ提出します。
④現地調査、補正
申請が受理されると法務局職員による現地調査が行われます。その後、法務局内の審査を経て補正事項が申請人(ご依頼者様)へ通知されます。補正期間内に補正を行い(本件ではみかんの木の伐採)、再度法務局職員が現地確認を行った後、法務局内で決済がなされ、承認されますと、申請人へ承認と納付書送付時期についての連絡が入ります。
⑤国庫帰属の承認、負担金の納付
負担金の納付書は申請人へ送付されますので、ご依頼者様より負担金を納付いただきます)。納付が完了した時点で、土地の所有権が国へと移転し(その後、法務局から担当省庁へ書類送付の後に担当省庁から法務局へ嘱託登記がなされ)すべてのお手続が完了となります。
おわりに
本実例紹介はあくまでご参考となります。今回のケースでのポイントは地上有体物(みかんの木)と接道の2点で他に特に大きな問題もなく、ご依頼者様が現地確認時のお立合いや補正を丁寧にしてくださったこと、また法務局との細かい事前の相談も功を奏し申請してから最終結果に至るまで約半年と本制度利用としては比較的スムーズに進んだケースかと思います。個々のケースで事情が異なりますので、相続した土地について国庫帰属制度のご利用を検討される際はぜひ神楽坂法務合同事務所へご相談ください。
(文責:村上)