事例紹介

2024.05.27
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数次相続と遺産分割協議書と遺産分割協議証明書

はじめに

被相続人が遺言書を遺すことなく相続が発生した場合、相続登記をするには、法定相続分で登記するか相続人全員の遺産分割協議(合意)により取得した相続人名義で登記をするのが一般的です。

法定相続分で登記をするには遺産分割協議は不要で、法定相続人の一人が保存行為として登記申請することも可能です。

一方、相続人全員の合意により法定相続分と異なる登記名義の変更をする場合は、登記申請の際に遺産分割協議書が必要になります。

ところが、一見シンプルに見えて少々ややこしいケースがありますのでご紹介したいと思います。

具体的なケースその1

父、母、長男、二男、の4人家族で、父→母の順に亡くなり、父単有名義の土地を長男二男で2分の1ずつ相続しようとする場合、現存する相続人が長男二男の二人なので一見法定相続のようですが、父が亡くなった当時は母が生存していたことから父の相続人はあくまで3人(母、長男、二男)であり、法定相続分は母2分の1、長男4分の1、二男4分の1となります。

もし遺言書が無く遺産分割協議を行わないまま母が亡くなった場合は一度法定相続分で登記をした後に母の持分を長男と二男で半分ずつ登記することになります。

これが基本形です。

しかし、一方で長男二男は父の財産を遺産分割するにあたり母の相続人としての地位も承継しています。

そこで、母亡き後に長男、二男が母の相続人としての地位も重複した立場で遺産分割協議を行い合意書として遺産分割協議書を作成し、父から長男二男へ直接名義変更の登記を行うこともできます。

具体的なケースその2

父、母、長男(一人っ子)の3人家族で父が亡くなった場合、父の法定相続人は母と長男の二人になります。

父名義の土地の相続登記を行わないまま母が亡くなった場合、現存する父の法定相続人は長男のみとなります。

この場合、長男は母の唯一の法定相続人でもありますし、他に財産を承継する人がいないので、父から長男へ直接名義を変更するのに遺産分割協議は必要なさそうに思えます。

しかし、父の死亡当時母は生存していましたので、遺産分割協議をしないまま亡くなった場合は一度法定相続分(母2分の1、長男2分の1)で登記した後、母の持ち分を長男が法定相続することになります。

もし父の死亡後、母の死亡前に、母と長男で父の土地を長男へ相続させる合意はあったが書面に残さないまま(遺産分割協議書を作成しないまま)母が亡くなった場合は、確かに母と長男の間で遺産分割の合意があった旨の「遺産分割協議証明書」を作成し、父から直接長男へ相続登記をすることになります(参考:平成28年3月2日民二第154号民事第二課長回答http://www.toki-joho.com/2016/03/h280302min2-154.htm)。

おわりに

一見法定相続どおりに思えるケースでも、ご家族の中でどなたが先に亡くなったか、残された相続人が複数か単数かで取り扱いが異なりますので、ご相続からお時間が経ち相続登記をしないまま複数の相続が発生したような場合は是非、私ども司法書士法人神楽坂法務合同事務所へご相談ください。

(文責:村上)