事例紹介

2025.06.30
  • 不動産登記

ローン完済後に抵当権者が商号変更および会社分割した場合の抵当権抹消登記について

はじめに

弊所で先日ご依頼を受けました標記登記についてご紹介したいと思います。今回は、ご依頼者様がローンを完済された後、抵当権抹消登記をしないままでいたところお借入れ先の会社(つまり抵当権者)が会社名を変更し、更にその後会社分割したというケースでした。ご依頼者様は商号変更および会社分割前に完済されていることから、会社分割前に抵当権者から受け取られた抹消書類をそのままお持ちになりご来所されました。

会社分割と完済の先後

ご依頼者様が会社分割前に抵当権の抹消登記をされていればそのままお手元の書類でお手続きができましたが、今回はお手続きしない間に会社の商号変更と会社分割がされたため、抵当権設定登記と抹消登記の際の抵当権者の会社名が異なることについて変更証明書(会社名の変更履歴、及び抹消登記義務の承継の経緯が分かる証明書)を添付する必要がありました。また、現在は会社法人登記情報がコンピュータ化されているため、多くの場合変更証明書は登記申請書に会社法人番号を記載することにより添付省略できるのですが、今回は会社分割により元の抵当権者(分割会社)と抹消登記時点での抵当権者(承継会社)の会社法人番号が異なるため、会社分割前の法人の変更証明書については添付省略ができませんでした。

お手続きの流れ

実際にしたお手続きの流れは、下記のとおりです。

抹消書類発行担当部署(承継会社の事務担当者)へ会社名変更や会社分割等についての経緯をヒアリング

法人の管轄法務局へ会社の変更証明書をどこまで発行できるかを照会

不動産の管轄法務局へ経緯を説明したうえで必要な変更証明書について照会

抹消書類の事務担当者へ現法人からの登記原因証明情報と委任状の発行を依頼

登記申請

会社分割と登記原因証明情報

会社分割は合併のように承継会社が法人の権利義務全てを包括承継するわけではなく、事業の一部または全部の承継となるため、今回の抵当権抹消登記義務がその承継の範囲に該当するかどうかが会社の履歴事項全部証明書だけでは明らかになりません。そこで、法務局からは登記原因証明情報へ「〇〇年〇〇月〇〇日の会社分割により本抵当権抹消登記義務は株式会社●●●●が承継した」という内容を盛り込む必要があるとの言及がありましたので、そのようなかたちで書類を作成いたしました。

おわりに

今回のケースについて更に詳しくお話しますと、実は抵当権者につき商号変更は1回ではなく複数回、本店移転も複数回されていました。変更日時が古いため管轄法務局でも変更履歴の一部につき保管期間を過ぎた情報でしたので、抵当権者である会社のご担当者及び管轄法務局へかなり複雑な照会が必要でした(因みに、会社分割前に抹消登記をしていれば会社分割前の会社法人番号を記載するのみで紙の変更証明書(会社の履歴事項全部証明書)を添付する必要はありませんでした)。ローンを完済されましたらなるべく早いお手続きがおすすめです。また、お時間が経ってしまい複雑化した抵当権抹消のお手続きは神楽坂法務合同事務所へお任せください。

(文責:村上)