- 2025.10.01
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権利証がない場合の所有権移転登記について
はじめに
権利証(登記済証や登記識別情報通知)は,売買や贈与による所有権移転の登記申請の際に確かに本人からの申請であることの担保として法務局へ提出が必要となります。権利証は再発行できないため、もし紛失した場合は別の方法により本人確認を行う必要があります。具体的には、「事前通知制度」又は「資格者代理人による本人確認情報の提供制度」という方法になります。また、公証役場で認証する「公証人による申請情報等の認証」の方法もあります。
事前通知制度
事前通知制度とは,権利証を提出せずに所有権移転登記申請がされた場合に、法務局より権利証を提供すべき登記名義人の住所地にあてて、本人限定受取郵便により、登記の申請があった旨、及びその申請の内容が真実であるときは2週間以内にその旨の申出をすべき旨の通知をし、この通知に対して、2週間以内に申請に間違いがない旨の申出がされることをもって、本人からの申請であることを確認するというものです(不動産登記法第23条第1項)。
本人確認情報提供制度
司法書士等の資格者が面談をして、本人であることを確認した旨の書類(「本人確認情報」)を作成し登記申請時に提供する方法です(不動産登記法第23条第4項1号)。この本人確認情報作成は登記の委任を受けた司法書士でないと作成できないため、登記手続きと併せて本人確認情報作成を依頼することになります。
公証人による認証制度
登記申請書、もしくは司法書士への委任状について公証役場で認証してもらい、法務局へ提出する方法です(不動産登記法第23条第4項2号)。ただ、実務上あまり利用はされていません。親族間の贈与登記等で登記申請をご本人自身でされるのであれば事前通知を利用すればいいですし、司法書士へ登記を委任する場合は司法書士への委任状へ公証してもらうことになりますが、司法書士が代理申請する場合はいずれにしても司法書士が本人確認を行いますので、結果として公証人と司法書士の両方が本人確認をすることになる本制度の利用は結果として当事者の手間が増えることになるため、実際に利用される場面はあまりないと思われます。
実務上の運用
理論上(法的に)は上記3つの方法がありますが、実際には司法書士による本人確認情報提供制度が利用されることがほとんどです。通知の返信という売主の判断・行為一つで登記の受理不受理が左右されてしまうという事前通知制度はリスクが大きすぎる(万が一売主が悪意を持って事前通知の返信をしなかった場合、買主は売買代金を支払ったにもかかわらず所有権を取得することができなくなる)ため、また公証人による認証制度については前述のとおりです。
おわりに
売主様としては少しでも費用を抑えたいため、本人確認情報作成料金の低い司法書士を探すといったことも考えられるかもしれませんが、前述のとおり本人確認情報作成のみを単発で司法書士へ依頼することはできませんので、買主様が選んだ司法書士に本人確認情報作成を依頼することになります。繰り返しになりますが、権利証は再発行されませんので、くれぐれも失くさないよう大切に保管しましょう。
また、権利証がない場合の本人確認情報作成に必要な公的書類及び本人確認情報作成にかかる弊所の料金についてはこちらのコラムをご参照ください。
「権利証がない場合の本人確認情報の作成に必要な公的書類について」
https://touki-sogo.jp/column/hudousan/2634/
(文責:村上)