- 2026.01.30
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相続した建物が未登記だった場合

はじめに
土地建物の相続登記のご依頼をお受けしたところ、実は建物については未登記だったということがあります。この場合、①建物の表題登記をしてから権利の登記(「所有権保存登記」といいます)をする、または②建物は未登記のままにして、土地の相続登記のみする、のどちらにされるかご依頼者様にご判断いただき、お手続きを進めることになりますが、判断に際してご相談をお受けすることが多いので、皆様が気になる点についてご説明したいと思います。
相続登記義務化の適用の有無
未登記建物は相続登記申請の義務化の対象になるのかということについて、結論としては、未登記建物は相続登記申請の義務化の対象にはなりません。相続登記申請の義務化に関する不動産登記法第76条の2の1項では次のように規定されています。
【不動産登記法】
第76条の2
1 所有権の登記名義人について相続の開始があったときは、当該相続により所有権を取得した者は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日から3年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない。遺贈(相続人に対する遺贈に限る。)により所有権を取得した者も、同様とする。
この「登記名義人」とは、登記記録の「権利部」の権利者を指します(同法第2条第11号)。したがって、「権利部」がある不動産についてのみ「登記名義人」は存在します。未登記の建物は「権利部」がない(そもそも登記されていない)不動産ですので、「登記名義人」はいません。よって、相続登記申請の義務化に関する上記の規定は未登記の建物には適用されません。それでは未登記建物は登記しないままでいいのかということですが、相続登記申請の義務化とは別に、法律上、建物についての表題登記の申請義務が規定されています。
表題登記の申請義務
未登記建物を相続によって取得した場合、所有権取得の日から1か月以内に、表題登記を申請することが義務付けられています(不動産登記法47条1項)。違反した場合には、「10万円以下の過料」に処される可能性があります(同法164条)。実務上、同法違反により実際に過料の制裁が科されたケースは、ほとんどないと思われます(少なくとも私は聞いたことがなく、このコラムを読んでいる方も周りにいらっしゃらないのではないかと思います)が、表題登記の懈怠は、法律上は義務違反となり、過料の制裁を受ける可能性があります。
【不動産登記法】
第47条
新築した建物又は区分建物以外の表題登記がない建物の所有権を取得した者は、その所有権の取得の日から1月以内に、表題登記を申請しなければならない。
第164条
第36条、第37条第1項若しくは第2項、第42条、第47条第1項(第49条第2項において準用する場合を含む。)、第49条第1項、第3項若しくは第4項、第51条第1項から第4項まで、第57条、第58条第6項若しくは第7項、第76条の2第1項若しくは第2項又は第76条の3第4項の規定による申請をすべき義務がある者が正当な理由がないのにその申請を怠ったときは、10万円以下の過料に処する。
未登記建物を登記する必要がある場合
①売却を予定している
建物を売却する場合は、買主に所有権移転登記をするため、前提とし登記をする必要があります。
②金融機関から借り入れを予定している
金融機関から借り入れをする場合は、所有不動産を担保に入れることを求められることが多いです。その場合は建物を登記する必要があります。相続した建物をリフォームするために金融機関から借り入れをするといった場合もあると思います。
固定資産税の課税
未登記建物について相続による所有権移転があった場合は、市区町村役場資産税課への届出が必要になります。所有権の登記がされている場合は、1月1日の登記名義人に固定資産税が課税されますが、未登記建物の届出については、1月1日に登録(届出が完了)されている方が、翌年度(4月~)の固定資産課税台帳に反映(課税)されます。
建物を取り壊した場合
登記した建物を取り壊した場合は滅失登記が必要になりますが、未登記建物を取り壊した場合は市区町村役場の資産税課へ届出が必要になります。
おわりに
未登記建物についての概要は以上ですが、例えば土地建物をご売却予定の場合でも、購入希望者が土地付き建物として購入をされるか、古い建物は取り壊し予定で土地として購入を希望されるかで方向性は変わってくると思います。また、建物の表題登記は土地家屋調査士が、土地の相続登記及び建物の所有権保存登記は司法書士が専門となります。表示の登記は現地調査が必要となるため、相続した未登記建物が遠方にある場合、表題登記は建物近くの地元の土地家屋調査士に、相続登記は自宅近くの別の司法書士に依頼するといったケースも少なくありませんが、戸籍や遺産分割協議書等手続きに使用する書類が重複することもあり、弊所ではお客様が土地家屋調査士と司法書士との間で何度も連絡や書類をやりとりするご負担を必要最低限にするべく土地家屋調査士と連携して手続きをおこないますので、未登記建物を含む相続登記について判断に迷う場合は是非神楽坂法務合同事務所へご相談ください。
(文責:村上)