事例紹介

2024.12.01
  • 相続コラム

戸籍の広域交付制度について

はじめに

本年4月1日から相続登記申請の義務化が始まりました。相続が発生してから3年以内に相続登記をしない場合、罰則の対象となるわけですが、相続登記手続きを行う際に、時間がかかるのが戸籍の取得です。
被相続人の出生から死亡までの戸籍を集める必要があり、転籍していた場合、転籍元の市町村に戸籍を請求する必要がありました。
被相続人の戸籍収集は非常に煩雑なものでしたが、本年3月1日から広域交付制度というものが始まりました。

広域交付制度について

この制度は一つの市区町村窓口、例えば、被相続人の最後の本籍地の市区町村窓口で、被相続人の出生から死亡までの戸籍を請求した場合、複数の市区町村に転籍していたとしても、一つの市区町村窓口で一括して戸籍を取得することができるというものです。
非常に画期的な制度で、この制度を利用すれば、相続の事務負担は大いに軽減し、時間も短縮されることになります。
広域交付制度を利用して戸籍を請求することができるのは、本人、配偶者、直系尊属(親、祖父母)直系卑属(子、孫)となり、兄弟姉妹はできません。また、広域交付制度を利用するには、請求者が市区町村の窓口で請求する必要があり、郵送請求や代理人による請求は不可となります。

さて、実際にこの広域交付制度を利用して、自分の父の戸籍を取得してみました。
私の居住するF市の市役所へ行き、戸籍の係で申請書を記載し交付申請をしました。私の父は最後の本籍はF市ですが、A町から転籍しているため、広域交付制度の対象となります。以前であれば、F市ではF市に本籍を移した後の戸籍しか取得できず、それ以前のA町での戸籍を取得するにはA町に請求しなければなりませんでしたが、F市で一括して取得することができました。私が利用したのは、まだ制度が始まって間もない5月でしたので、時間がかかる旨を言われ、即日交付されず、後日窓口へ取りに行きました。
実際に交付された戸籍を確認すると、戸籍末尾の発行者がA町が本籍である戸籍についても、発行者がF市長名となっていました。広域交付制度を利用して取得した戸籍の特徴なのでしょうか。

おわりに

このように、戸籍の広域交付制度は、一つの市区町村で一括して戸籍を取得できるため、煩雑な戸籍収集作業の負担軽減、時間短縮に繋がります。相続手続を司法書士へ依頼する場合も、この制度利用して頂くと、より早く手続が完了することになります。

(文責:馬場)