事例紹介

2025.10.15
  • 相続
  • 相続コラム

相続人に未成年者がいる場合の遺産分割

はじめに

相続人に未成年者がいる場合には、未成年者の法定代理人(父又は母)も相続人となってしまう場合が多くあります。その場合、法定代理人と未成年者の利益が相反し、法定代理人が未成年者の代わりに遺産分割協議を行うことは利益相反行為になります。例えば、父が亡くなり相続人が母と子(未成年者)のケースですと、法定相続人は母と子の2人となります。この場合、母と子(未成年者)は、父の相続財産を分割し合う関係にありますので、仮に母が子を代理できるとなると、母は子の意思に関係なく自由に相続財産を取得することができてしまいます(これを「利益相反」と言います。)。そこで、子のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければなりません。また、同一の親権に服する子の間で利益が相反する行為や、未成年後見人と未成年者の間の利益相反行為についても同様です。

 

特別代理人選任について

管轄裁判所

特別代理人の申立ては、未成年者の住所地を管轄する家庭裁判所に対して行います。

 

費用

申立費用として未成年者1人につき800円の収入印紙と、郵送のための郵便切手が必要になります。司法書士や弁護士等に依頼する場合は報酬が別途かかります。

必要書類

1.特別代理人選任申立書
2.未成年者の戸籍謄本
3.親権者の戸籍謄本(子供と同一戸籍の場合は1通で大丈夫です)
4.特別代理人候補者の住民票
5.財産証明書(残高証明書や通帳コピー、不動産の登記事項証明書、課税明細書や評価証明書等)
6.遺産分割協議書(案)※

※特別代理人選任申立ての段階で、遺産分割協議書(案)を添付しなければいけません。選任申立てを行った後では、協議を変更することはできませんので、分割内容を決めてから申し立てをする必要があります。

 

申立ての流れ

1.選任申立書に添付書面を揃えて管轄家庭裁判所へ申立書を提出。
2.家庭裁判所内で審査。
3.家庭裁判所から特別代理人候補者に宛てて照会書を送付。
4.特別代理人候補者が照会書に必要事項を記入して返送。
5.受理決定後、家庭裁判所から申立人に「特別代理人選任審判書」を送付。

家庭裁判所で、特別代理人の選任申立が受理されると、「特別代理人選任審判書」が送られてきます。この書類が申立人に届いたことで、無事に選任申立が認められたことになります。選任申立てを行ってから審判書の送付まで手続きには1~3ヶ月程度かかります。この審判書と遺産分割協議書を合わせて提出することで、銀行や法務局などで相続手続きを進めることが可能となります。

 

特別代理人の候補者

特別代理人選任申立書には、あらかじめ特別代理人の候補者を記載しなければならないので特別代理人の候補者は前もって決めておく必要があります。基本的には、相続人以外の成人であれば特別代理人になることができますので、例えば、未成年者の祖父母が特別代理人になるケースが実務上では多いです。必ずしも親族である必要はないので知人の方でも法律上問題はありませんが、遺産分割の内容(財産状況等)は知られてしまいますのでそれでも構わないとなるとなかなか親族以外へお願いするのは抵抗があるという方も多いかもしれません。

なお、未成年者が2名以上いる場合には、未成年者の数に応じて特別代理人の選任をしなければいけませんので、未成年者の人数に応じて、候補者が必要になります。

 

おわりに

相続手続きにおいて、相続人に未成年者がいる場合でも必ずしも特別代理人が必要になるわけではなく、法定相続分に従って遺産を承継する場合には被相続人の戸籍や相続人の戸籍(相続証明書)を提出することで、手続きが可能です。また、未成年のお子さんが幼児や小学生ならともかく高校生で間もなく成人(18歳)を迎えるということであれば、その時期を待って遺産分割するという選択肢もあります。また、遺言書があれば、遺産分割協議をせずとも、遺言書どおりに相続手続きをすることが可能です。そういった意味では、不動産や預貯金等の資産があり、中学生や高校生のお子さんがいる責任世代の方々も遺言書を書く意味は十分にあります。また、相続財産について相続税申告の要否(相続財産の総額が基礎控除の範囲内か否か)や不動産の有無によってもどのような対応が最適かという答えは異なります。特別代理人の選任、不動産の相続手続き、遺言書の作成等に関して不安のある方はぜひ神楽坂法務合同事務所へご相談ください。

(文責:村上)