- 2024.11.01
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- 商業登記
- 相続コラム
合同会社の社員が死亡した場合の出資持分について
はじめに
近年は設立費用が抑えられ経営の自由度が高い合同会社を設立し活用されるケースが多くなりました。一方、合同会社とは経営者と出資者が同一であるため、経営者の方から自身の相続が発生した場合のお問合せも弊所へ寄せられます。そこで合同会社の持分の相続について大まかにご説明したいと思います。
出資持分の相続の可否
持分会社の社員の死亡は法定の退社事由です(会社法第607条)。原則として出資持分は相続人には引き継がれないことになります。ただし、定款に相続による持分の承継規定があれば引き継ぐことができます。
ちなみに「合同会社の社員」とは、従業員という意味ではなく、合同会社に出資したり経営に参加している社員のことをいい、社員が誰であるかは定款に記載されています。
なお、清算中の持分会社では、定款に持分の承継規定がなくとも相続人は承継することができます。その理由は、清算持分会社は清算の目的の範囲内において清算結了するまで存続するものであり、社員の個性や信用は問題とされないためです。
ただし、定款に相続人全員は相続承継できる旨の定めがあっても、遺産分割で持分を承継する相続人を定めて、その遺産分割に基づく加入の登記は受理されません(参考 無限責任社員の死亡につき 昭和34年1月14日民事甲2723号、有限責任社員の死亡につき昭和38年5月14日民事甲第1357号回答)。
これは無限責任社員または有限責任社員の持分は、株式会社における株主の地位とは異なり権利義務を包括したものであって、いったん社員となることによって生じた債務は分割することができず、通常の財産とは異なるため民法909条(遺産分割の効力)の適用は無く、遺産の分割は相続開始の時に遡らないと解されているからです。遺産分割協議書に基づく登記の申請は受理されません。
そういった場合は、相続人全員で社員の地位を承継した後に業務執行社員と代表社員を定めるという方法も考えられます。合同会社の社員は各自が業務執行社員であり、各自が代表社員というのが基本ですが、社員の中に「出資はするが経営には携わりたくない」という人がいる場合は定款で社員の中から業務執行社員を定めることができます。特定の社員を業務執行社員とした場合、その社員は業務執行権のみ与えられることになります。また、複数の社員がいる場合にそれぞれが会社の代表権を持っている状態では対外的に混乱を招くおそれもあるため、そういった事態を避けるために合同会社では特定の社員のみに代表権を与え、権利を行使できる「代表社員」を定款で定めることができます。この方法を利用するわけです。
出資持分の払戻請求権
定款に相続人の承継規定が無い場合、社員の死亡によって退社となり、退社による出資持分の払戻を受けることができます(会社法第611条)。相続の際にはその持分払戻請求権として評価をすることになります。因みにこの評価は退社時の合同会社の純資産の額をベースとして計算されますが、必ず払戻が発生するわけではなく、純資産の額がマイナスであれば払戻を受けられません。
合同会社の唯一の社員が死亡した場合
社員が1名の合同会社において唯一の社員が死亡した場合、原則として当該社員が有する合同会社の持分は相続の対象にならず相続人が持分を承継することができないため、唯一の社員が死亡した場合には、会社法641条1項4号「社員が欠けたこと」に該当して、合同会社は解散することになります。
相続人の承継規定は無いが、相続人が社員として加入したい場合に、被相続人以外に社員が存する場合には、この払い戻した出資持分財産等を再度出資して(他の社員全員の同意を得て)社員となることは可能ですが、被相続人以外に社員がいない場合は、被相続人の死亡により会社は解散するため、この方法も使えませんので注意が必要です。
おわりに
合同会社は個人経営や家族経営で活用されている方が多いことから、経営者の死後にその地位の分散化や意図せぬ相続人に相続されることに不安を持ったり、逆に自らの死後に会社を消滅させることなく相続人に継がせたい、など様々な思いがあることでしょう。
合同会社の持分社員の相続に際しては、定款の定めにより承継の方法が異なります。お悩みの際は司法書士等の専門家へご相談ください。
(文責:村上)