事例紹介

2026.06.15
  • 後見、信託

はじめての後見制度 ~成年後見と任意後見、どちらを選ぶ?~

はじめに

「成年後見と任意後見、何が違うのですか?」

成年後見のご相談の中で、非常によくいただく質問です。
どちらも判断能力が低下した方を支える制度ですが、実は、制度が始まるタイミングや、ご本人の意思がどの程度反映されるかに大きな違いがあります。

将来に備えるためには、それぞれの特徴を知り、自分やご家族に合った制度を選ぶことが大切です。

今回は、成年後見と任意後見の違いについて、できるだけわかりやすくご説明します。

一番大きな違いは「準備できる時期」です

成年後見と任意後見の最大の違いは、判断能力があるうちに準備できるかどうかです。

成年後見は、認知症や知的障害、精神障害などにより、すでに判断能力が不十分になった後に利用する制度です。

家庭裁判所へ申立てを行い、裁判所が後見人を選任します。

一方で任意後見は、まだ判断能力が十分にあるうちに、将来に備えて契約を結ぶ制度です。ご本人が、「将来、自分の判断能力が低下したら、この人に支援をお願いしたい」という意思を反映できます。

後見人を自分で選べるかどうか

ここも大きな違いです。成年後見では、後見人を選任するのは家庭裁判所です。

申立ての際に候補者を記載することはできますが、必ずその人が選任されるとは限りません。

一方、任意後見では、将来の任意後見人を自分で決めることができます。

例えば、

  • 子ども
  • 兄弟姉妹
  • 親族
  • 司法書士
  • 弁護士

など、信頼できる方を選ぶことができます。

本人の意思を反映しやすいのは任意後見

成年後見制度は、本人の保護を重視する制度です。そのため、家庭裁判所の監督のもと、後見人が法律上必要な財産管理や契約手続きを行います。

一方、任意後見では、契約の内容を自分で決めることができます。

例えば、

  • どの預金口座を管理してほしいか
  • 介護施設の契約をお願いしたいか
  • 不動産管理を任せたいか

など、あらかじめ具体的な希望を盛り込むことも可能です。そのため、任意後見は「自己決定権を尊重する制度」ともいわれています。

任意後見にも家庭裁判所の関与があります

任意後見は、自由度が高い制度ですが、完全に当事者だけで進める制度ではありません。本人の判断能力が低下した後は、家庭裁判所が任意後見監督人を選任します。任意後見監督人は、任意後見人の業務を監督し、本人の権利や財産が守られるよう確認する役割を担います。

成年後見が向いているケース

次のような場合は、成年後見制度が適していることが多いでしょう。

  • すでに認知症が進行している
  • 預金の管理が難しくなっている
  • 施設入所契約が必要

不動産売却などの手続きを急いでいる

判断能力が低下した後は、任意後見契約を新たに結ぶことはできません。そのため、

成年後見の利用を検討することになります。

任意後見が向いているケース

一方で、

  • 判断能力はまだ十分にある
  • 将来に備えて準備したい
  • 誰に支援をお願いするか自分で決めたい
  • 自分の希望をできるだけ反映したい

という方には、任意後見制度が向いています。近年は、認知症対策や終活の一環として、任意後見契約を利用される方も増えています。

実務では「任意後見+他の契約」を組み合わせることもあります

実際のご相談では、任意後見契約だけでなく、

  • 見守り契約
  • 財産管理委任契約
  • 死後事務委任契約
  • 遺言書

などを組み合わせるケースも少なくありません。将来への不安は人それぞれです。だからこそ、一人ひとりに合った制度設計が大切になります。

 

おわりに

成年後見と任意後見は、どちらも大切な制度ですが、利用するタイミングや仕組みが大きく異なります。大切なのは、「どちらが良い制度か」ではなく、今の状況にどちらが合っているかを考えることです。迷われたときは、早めに専門家へ相談することで、選択肢が広がることもあります。

(文責:五味)